こんにちは!
ころん板橋校です。
自閉症の9歳の女の子、5歳の女の子、9歳の男の子を対象に「あれは何?」と疑問詞を使うようにトレーニングする研究を行った1995年の研究をご紹介しましょう。
この研究は、BRIDGET A. TAYLOR・SANDRA L. HARRIS (1995) によって行われました。
この研究では例えば、教える大人とお子さんが教室で机を挟んで対面に座り、写真カードで知っているもの20枚と知らないもの20枚を用意してお子さんに対し各刺激をランダムな順序で提示し「テーブルの上にあるものをみてください」といいます。
知っているものについては名前を言えば良いのですが、知らないものに対しては「これは何ですか?」と聞けるようになることをターゲットとした研究です。
お子さんには、大人のモデル(「これは何ですか?」とお子さんに言って欲しいことのお手本を示す)を通し「これは何ですか?」と聞くスキルを教えています。時間遅延法(time delay procedure)という方法も使われていて、簡単に言えばスキルを教える際に「お子さんの自発を待つ」手法です。
ヒントを徐々に少なくしていくことに加え、正しい反応をした際に称賛・食べ物・トークンなどで行動を強化していくことによって、最終的に自発的に「これは何ですか?」と聞くスキルが出現するようになりました。
お子さんが「これは何ですか?」と聞けるようになったのちに、より構造化されていない場面での般化プローブが行われました。
「般化(はんか)」とは、教えたスキルが他の刺激や場面でも使用されるかどうかということなのですが、使用された場合には「般化した」と言います。
もし使用がされなかった場合には「般化を促すために、別の場面でも練習をする必要」が出てきます。
般化プローブでは、校舎内で行う毎日の散歩時間に行われました。お子さんの知らない物を10個散歩のコースに置くようにします。
これらの物の配置は、ランダムに決定され各セッションで毎回の変更がなされました。
「散歩に行こう!」と言って、お子さんと散歩に出かけます。
大人は必要に応じて、カードの時と同じ手法で正しい反応を引出しました。
データを見れば3人のうちの5歳の男の子については、ほぼ般化が生じ、散歩場面であまり練習をしなくても「これは何ですか?」と質問を出すことができているようです。
他の2人については般化を促すための練習が必要でした。
質問することは、新しい知識を得る上で重要なスキルなのです。総合考察で著者は自閉症のお子さんが質問をするスキルがほとんどない場合があることを指摘しています。著者はスキルを学ぶことで新しい知識の獲得にもつながると述べ、実際に研究の中で質問をすることによって、新しい知識を学んだお子さんもいたようです。
これは1995年の研究で少し昔のもののように思いますが、「質問をなかなかしない」ということは現代の自閉症児でも往々にしてあることだと思います。
そのため、このような疑問詞を教える研究というのを知っておくことで支援方法のレパートリーを広げることができると思います。
今後とも、キッズアカデミーころん板橋校をどうぞよろしくお願いいたします。
【参考文献】
BRIDGET A. TAYLOR・SANDRA L. HARRIS (1995) TEACHING CHILDREN WITH AUTISM TO SEEK INFORMATION: ACQUISITION OF NOVEL INFORMATION AND GENERALIZATION OF RESPONDING. JOURNAL OF APPLIED BEHAVIOR ANALYSIS 28, p3-14